林 誠@砺波市立鷹栖小学校
■実践のねらい:
江戸時代末期に結ばれた不平等条約の内容を理解するために、教科書や資料集には図1の絵がよく取り上げられています。ふつうは、各自、教科書のこの絵を見ながら気付いたことを発表し合う程度でまとめていくのですが、2つの戦争をはさむ条約改正の道のりについて切実感をもって考えさせるためには効果的な資料なので、今回は提示の仕方を工夫し、より深く考えさせたいと思いました。そこで、プロジェクタを用いて黒板上のスクリーンに絵を大きく投影し、吹き出しや意見を絵に直接書き込んだり、色を塗ったりしながら学習を進めることにしました。
図1;提示した教科書の絵
■実践の概要:
黒板に貼り付けるタイプのホワイトボード兼用スクリーンに、教科書の絵を投影します。(資料集などには、彩色して描き直したものが出ていたりするのですが、それはおもしろくありません。)プロジェクタにつないだ書画カメラで教科書自体を映してもよいのですが、折り目が気になったり、ページがめくれてずれたりすると困るので、あらかじめデジタルカメラで撮影しておいたものを投影することにします。いずれにしても、準備は簡単です。
ノルマントン号事件の概略を説明した後、絵を見て気がついたり疑問に思ったことを自由に話し合わせます。ボートについている旗に疑問をもつ子が必ずいるので、色を塗ってやります。すると、赤十字のマークの中にイギリス国旗がついたものらしいということが分かり、がぜん意見が白熱してきます。そして、腕を組んでいばっている船長らしき人物や、海中から顔を出している人などの気持ちを吹き出しにして書き込んでいくにつれて、「どうしてこんなことが起きるのか?」という疑問が子供たちから出てきます。最後に「海の色は何色だろうか?」と投げかけて意見を出させた後、「日本人の乗客は全て亡くなりました。」と赤色(血の色のつもりです)で海を染めると、強いインパクトとともに「なぜ、こんなことが許されるのか?」「どうしたらいいのか?」という課題意識が子供たちに生まれました。
■プロジェクタ活用の効果:
この実践でのプロジェクタの使い方は、基本的にはOHPと同じです。違う点は、OHPの場合はTPシート上に書き込みをするのに対して、この実践では、黒板のスクリーン上に書き込みをしていることです。子供たちが見ている絵の場所へ直接書き込みをするわけですから、意識の集中がずれることがありません。また、広い範囲に書き込める(スクリーンの外の黒板にチョークで書いてもよいわけですから)ことも利点です。
一方、TPシートと同様に色マジック使うことができるのも効果的です。この実践の場合は、「ぬり絵」をする事による効果も大きいと思われるからです。
■応用のヒント:
プロジェクタと書画カメラをつなげて準備しておくことで、教科書の絵や写真、子供のノートなどをすぐに投影することが可能です。書画カメラがない場合はデジタルカメラでも同様な使い方ができます。ホワイトボード兼用スクリーンがあれば、直接書き込みができますが、ない場合でも黒板に直に投影すれば同じような効果が得られます。この点が、テレビモニターに映し出すのとは最も大きな違いですね。
■プロジェクタ活用のポイント3つ: